nowhere HAYAMA
葉山の対話 2023ー2025 9

陰陽が反転し、動き出すことで、
世界は大きく変わっていく。
その鍵を開けていきたい。

浜中壮一郎さん Soichiro Hamanaka

2024年6月、秋谷海岸で撮影していたとき、
海辺で思いがけなく遭遇したのが、
はまちゃんこと、浜中壮一郎さんだった。

その時に交わしたやりとりが思いのほか印象に残り、
そこから出会いが重なり……。
葉山百周年のプロジェクトをどこか超えたような、
不思議な対話が生まれていった。

腕のいい鍼灸師であることは耳にしていたけれど、
身体を通して見渡すその世界は広く、
同時に、ちょっとミステリアスで、
何よりもしっかり大地に着地している感じがした。

陰陽をつかどる世界に長くたずさわりながら、
その先にある領域につながろうとしているはまちゃん。
彼の感じる新しい時代の幕開けは、
言葉を受け取った僕たちも、ワクワクする可能性に満ちていた。

浜中壮一郎
1972年、東京生まれ。葉山町在住。鍼灸按摩指圧マッサージ師。この世界の不思議への探究から、自然哲学としての陰陽五行論を学び、職業として鍼灸師の道へ。大宇宙の相似をなす小宇宙としての身体に接する日々を通し、この世界の仕組みを研究中。2006年、葉山の海、里山の自然や生き物たちに惹かれて移住。現在、葉山町一色にて、鍼灸訪問診療出張所を開き、鍼灸按摩経絡治療、経絡遠隔治療を行ってる。

収録:2024年11月21日 @葉山一色治療室
編集:
長沼敬憲 Takanori Naganuma 
長沼恭子 Kyoco Naganuma
撮影:井島健至 Takeshi Ijima @秋谷海岸

はまちゃん ここって、雨が降ったあとに水かさが増えると、(家の外の)土手のところに湧き水が流れてくるんですが、その水が結構きれいなんですよね。
このあたりは菖蒲沢って呼ばれているように、菖蒲が茂る湿地で、水の溜まったところだったようなんですが……、じつは数年前に「大地の再生」が入っているんですよ。

―― ああ、そうなんですか。駐車場になっているあたり? ここも含めて、なにか影響がありますか?

はまちゃん 大地の再生をかけると、環境がただ変わるだけでなく、じつは人に影響が出てくるんです。潜在的なものが浮かび上がってくる感じがあって。
蓋されてきたものがパカっと開いて、なかに入ってたものが立ち上がってくるようなことが、結構あるなあと思って。空いてしまうと、本人にとっては何だかわからないものが出てきちゃう。それは別に悪いことじゃないんですが……。

―― 環境が変わると人も変わるんですかね。

はまちゃん そう。人と土地はすごくつながっていて、「卵が先か鶏が先か」みたいなところはあるんですけど、現象と潜象っていう言葉があるじゃないですか?
土地のほうが現象だとすると、現象を先に動かすことで(潜象である人の心身にも)ガツンって変化が現れてくる感じがしますね。本当は潜象から変化するわけですけど、人と環境、どちらを潜象とするかで変わってきますよね。
さっきまでたまたまいらしていた数学者の方と話をしていたから、その影響もあると思うけれど……、潜象をどちらと取るかということが、いまの時代の境目だと思いますね。

―― なるほど。実際、どちらでも取れますよね。

はまちゃん どちらでも取れるんだけど、これまでは環境を潜象として我々を現象とすることが普通だったと思うんです。ただ、いまは逆転現象がかなり起きていて……。
たとえば、猛暑によって熱中症が起こると言われていますけど、ここで毎日治療をやっていると、それまでの「暑い、暑い」っていう状態が涼しくなったりするんですよね。
つまり、暑かったのは猛暑が原因だったのかというと、じつはそうではない可能性があるということです。

―― 猛暑と関わりなく、体が変化するということ?

はまちゃん 面白いなと思うのは、そうやって暑かった体が涼しくなった時、その影響を環境のほうが受けることもあるということです。そうとしか言えないような現実に触れることが、最近、とても多くなっているんです。

―― 人が変化することで環境も変化する……。

はまちゃん どちらが潜象なのかということを考えた時、じつは我々のほうが潜象であるということが見えてくるんですね。
これって陰陽論になってくるんですけど、陰陽論って陰主陽従、つまり、陰が主で陽が従ととらえられているので、陰が変わると陽も自動的に変わってしまう。

―― その場合、陰が潜象、陽が現象にあたりますよね? これまでは、環境のほうが陰=潜象だったので……。

はまちゃん そう。たとえば、(陰陽論をベースにしている)マクロビオティックの世界では、「これは体を冷やす、これは温める」って陰陽が固定していますよね
固定することも必要な面はあると思うんですけど、結果として固定化された世界観になって、「冷えた体を食事で温めましょう」っていう、平面的な構図ができてしまう。
いままでは「冷えを避けて、温める」ということがとても重要だったわけですけど、もしかしたら、そのやり方がうまくいかなくなっているのかもしれません。

―― ああ、自分のほうに原因があるのだとしたら、外を変えてもうまくいかないですね。

はまちゃん おそらく、そういうことだと思うんです。実際、そういうことをずっと実践してきた人が、突然、重い病気にかかるようなケースも見ているし、これまでになかった世界が立ち上がってきている気がしますね。

―― 「こんなにやってきたのになぜ?」みたいな?

はまちゃん 自然の理に適っていると思ってやってきたことが、じつは「症状を抑え、身体に蓋をしてしまっていた」ということになりかねないということです。
そうやって3次元世界に固定化した陰陽のなかだと、温めること、つまり、陽で蓋をしてしまうことにもなってくるわけです。本当は陰陽って動くものだと思うんですけどね。

―― 本当は動くものなのに、3次元的に固定化することで、温めることに偏ってしまうという……。

はまちゃん 温めることに偏ってしまうと、今度は(陰性の)椎茸を食べたときにすごい反応が出てしまったり、体がめちゃめちゃ冷えてしまったり……。
もちろん、それで救われた人もいるいるので悪いわけではないんだけど、コロナ前、特に3.11を越えたあたりから、そうした傾向が強く出ているなって感じるんですよ。

―― 平面的な世界から立体的な世界へ、陰陽を理解することの先に向かっている気がしますね。

はまちゃん そうですね。物事を平面でとらえてきたことに対する   結果が現象化してしまうというか。
要は、僕たちの意識が平面世界を抜け出そうとしているので、平面世界に偏っていたことに気づかされるようなことが、現象としてあらわれるんだと思います。

Note.1

ここって
今回の対話は、一色の某所にあるはまちゃんの治療室ではじまりました。


大地の再生
矢野智徳さんの提唱する環境再生の手法。土地の水脈、風の流れを整え、自然本来の循環を取り戻すアプローチとして、全国各地で実践されている。
https://daichisaisei.net/


現象と潜象
陰陽にも通じる、この世界の2つの側面。現象=目に見える領域(結果)であるのに対し、潜象=目に見えない領域(原因)を指す。


環境を潜象として我々を現象
●これまで
猛暑が原因(=潜象)で熱中症という結果(=現象)が起こる

●いま
治療を通して心身が変化することで(=潜象)で、熱中症が改善する(=現象)

●これから
個人の心身の変化(=潜象)が周囲の環境の変化(=現象)にも及ぶ?


陰陽が固定していますよね
口伝で継承されていくなかで、本来のマクロビオテックから離れ、固定されていった面があるのかも(はまちゃん後日談)


平面的な世界から立体的な世界へ




―― 一方で、大地の再生のように環境を変えることで、自分に内在したものが顕在化することもある?

はまちゃん そこってすごい難しいと思うんですけど、環境のほうだけを変えようとすると負担が出るというか、じつは同じようなことが鍼灸界にも起きていて……。
要は、ここに詰まりがあるからそれを取れっていう世界ですよね。
それが見えてしまうから取る。たとえば、そこに鍼を当てる。もしくは、当てなくてもそこに意識を通す。で、それを抜いていくっていう世界があるわけです。
エネルギーを補うっていう世界と、もう一つがこの邪を払う、抜くっていう世界なんですけど、じつはこれを続けていても延々と平面世界を移動するだけなんですよ。

―― 同じ次元なんですね。

はまちゃん そう。正気を補い、邪気を抜くことが必要なんだけど、邪気を抜くことをしていると、また違う形で体に反応が現れたり、必ず何か出てくるんですよね。
そもそも、邪が担保してくれていたことってすごくあるので、邪に逆らうのはいいとは言えないわけで……。

―― 「がん細胞も体に必要があって存在している」って言いますけど、でも取らないと増殖して、そのまま死に至ってしまうところもあるりますよね?

はまちゃん そこも本当に難しいところで、僕もそういうところにつねに向き合わされているというか……。ある意味、がん細胞が担保してくれるものを抜いてしまうことで全身転移という形で現れたり、違う形で現象化することがある。
でも、邪に対する意識の向け方が変われば、また違う形で現象化することもあるわけで……。

―― 邪っていう言葉自体が違和感あるかもしれないですね。

はまちゃん 風邪っていう言葉がまさにそれを象徴していて、風邪は風の邪って書きますけど、「風を引く」ことによって身心がクリアーになっていく。そう、風を通すことで自分のなかにある淀みをとっているわけですね。
自然界を見ていても、台風が来て、季節は変わる。変わり目には必ず風が吹くし、台風が来ることによって命が循環していく、そうした流れのなかで風邪を引いたりする。じつは風邪を引っ張っているのは我々なんですよ。

―― なるほど、面白いな。でも、なぜ風邪だけ「引く」という言い方をするでしょうね?

はまちゃん 面白いですよね。コロナもじつは引っ張っているのはこっちだっていう話がありまよね。スパイクタンパクを引っ張っているのは、じつは我々ですっていう。

―― 細胞の受容体がウイルスのスパイクタンパク質を受けとっているわけだから、まさに自分で呼んでいる……。やばいな、いきなり話が深くなっちゃった(笑)。

Note.2

詰まりがあるからそれを取れ
詰まりをとる(=邪を払う)

循環が起こる(=回復する)

別の詰まりが生まれる

平面世界からは抜け出せない?


―― ここは何年くらい前からなんですか?

はまちゃん 僕は、葉山でも何軒か転々としていて、ここはもう5年くらいですかね。

―― 治療に関しては鍼灸がベースで?

はまちゃん 鍼灸師なので、鍼を道具で使っているんですけど、最近は別に手でもいいのかなって。じつは按摩師でもあるので、徒手と鍼、もともと両方なんです。
実際、鍼と按摩の資格って同時に取ることが多いんですけど、按摩の資格を持っている人のなかには、鍼灸よりもマッサージが好きという人も多かったり。

―― いろいろな考え方、やり方があるから、同じ資格を持っていてもそれぞれで違ってきますよね。

はまちゃん 違ってきますね。僕自身、最近は遠隔治療が多くなりました。同じように経絡や脈を診ていくので、遠隔の経絡治療と呼べばいいかもしれません。

―― 遠隔って、どうやって治療するんですか?

はまちゃん いや、もう寝ていてもらうだけです。今日もヒマラヤの標高6000メートルの山を登って、4400メートルまで降りてきた方から連絡をもらって。
屋久島で知り合った方なんですけど、「足のむくみが強く出ていて、なかなか取れない」ってLINEがあったんです。

―― ヒマラヤから? すごい。それで遠隔治療を?

はまちゃん 4400メートルって、自分が治療したなかでは最高地点ですね(笑)。そういう時代がもう本当に来ているんだな、面白いなって思って。
物質的ではない世界によりアクセスしやすいので、「見えない世界の可能性が開くところに来ているな」っていう時、逆に遠隔でセッションをすすめることも結構あるんです。
僕のほうに返してくれるものがあるし、お互いの関係性のなかでそういう方向に進んでいくところもあるので、(治療していて)やっぱりそこが面白いですよね。

―― これまでの概念では、「体に直接刺激を与えなかったら何も変わらない」って思いますよね? そういう考え方とか感覚自体が変わってきているのかも。

はまちゃん そうなんだと思います。

―― 目に見える物質的な対象に触れるから変化するんだって、それが当たり前のように思われてきたけれど……。

はまちゃん 僕も「遠隔ができるな」って思ったのは、突然なんですよね。ある時、自分のなかのある感情に触れたことで「できる」に変わったんですけど……。

―― どういうシチュエーションだったんですか?

はまちゃん 「できる」と思った時、徳島の知人のところにいたんです。そのタイミングで葉山の方から「いま診てほしい」って連絡があったので、何も聞かずに「遠隔で見ます」って言ったら、向こうも「お願いします」って。普通は「葉山に帰ってから診ます」って言うと思うんですけど……。

―― 実際やってみて、症状が変わったわけですよね。

はまちゃん 肩が上がらず、コートに腕が通らない感じだったんですが、「多分、ここの経絡だろうな」って遠隔で触って、相手がその気に触れて、それで動くようになったんです。
だから、完全に治っている……、治っているという現象をいただいたっていうことだと思うんですけど、根本にあるのは、自分のなかの何かに触れたということなんです。

―― それが潜象っていうこと?

はまちゃん 触れた瞬間に自分自身の現実が変化して、「治療してほしい」という連絡があって。
(治療を通して)その変化した現象をお互いが経験し、それでまた自分が変化して。いままでとまた違うものが見えてくるようになったという感じですね。
たとえば、脈が全部取れるんだってことがわかったり……。

―― 遠隔で?

はまちゃん はい。取れるとわかれば、誰でも取れるんですよ。

―― 意識の力は一般に思われている以上に大きいんですかね。

はまちゃん たとえば、それまで「なぜこんな体験をしているんだろう?」って現象のほうに意識が向かっていたんですが、じつはその現象は僕自身が欲っしていた。
それと同時に、潜在的な自分の感情を浮き上がらせるため、そういう経験をする必要があった、それが現実として現れていた面と、両方あると思いますね。

―― 病気にもそういう側面があるってことですよね。

はまちゃん 病気は特にそうだと思うんです。本当はそれが本質なんでしょうね。だから、症状だけを動かしてしまうところに最大の問題があるというか……。
体験したい、気づきたい何かがあって、そのために現象が起きているというところに中心があると思うんです。

―― 感情に触れるって言い方が面白いですね。感情に触れると変容が起きるみたいな?

はまちゃん (内在する)感情に意識を当てるっていうか。今日いらした数学者の方との話にまたつながってくるんだけど、岡潔さんが情緒ということを話していますよね?
人間の脳を働かせる世界と、感情に触れた瞬間に落ちてくる数式の世界と、多分、両方があるんです。
結局、数式っていうのはそぎ落としの作業、シンプルに最後に残るものかもしれない。情緒に触れているとき、そぎ落としがかかって落ちてくるのかなっていう。

―― 情緒に触れているときにそぎ落としが起き、最終的にシンプルな数理の世界につながると。

はまちゃん そう、数式として現れたというか……。そこに意識が入ったときに変換が起きる、いまこの仕事をしていて、それが一番面白いところなんですね。

Note.3

それでまた自分が変化して
治療される側と一緒に、治療する側も変化していく

治療すること自体が、変化の流れの中に組み込まれている?


岡潔さん
日本を代表する数学者。「数学は論理ではなく、情緒によって解かれる」 という独特な考えを持っていた。


―― 情緒とか感情に触れるっていうことは、意味としてわかるんですけど、実際に病気の人がいて治療をするというとき、それをどう落とし込んでいけばいいのか。

はまちゃん そうですよね。たとえば、施術者である僕と患者さん、意識を向ける側と向けられる側がいて……、これは観測者と非観測者と呼べると思うんですけど、「観測者が意識を向けたことによって、非観測者が同調して変容が起こる」という形になるのがベストだと思うんです。

―― ただ治すとか、治してもらうというだけでなく?

はまちゃん そう。初めからそうではなくても、意識を向けたことで同時にその人も意識が向いた状態になる、治療に意味があるとしたら、そこかなっていう気がします。

―― 意識を向けることができれば、別に対人じゃなくてもいい?

はまちゃん そうなんです。個人ではなく対面っていうのが治療の世界ですけど、変な話、「一人でヨガや瞑想をやればいいんじゃないか」っていう思いもあったんですよ。

―― 解像度が違うと思うんですけど、僕たちはいま対話をやっているでしょう? 対話も対面だし、「いったんゼロにする」という前提があって、場がつくられるんですね。
そうすると変容が起きやすいということは、この4、5年続けてきてよくわかるんです。

はまちゃん 対話のほうがシンプルでいいですよね。本当に対話は根源だと思います。

―― 治療することも、ある意味で対話ですよね。

はまちゃん 道徳的に聞こえるかもしれないですけど、相手のことを自分事ととしてとらえる感覚というか……。
岡潔さんが話している情緒って、どんな意味を持っているのか? 数学者の方が来る前に調べてみたんです。そしたら、情緒とは「ある事柄に関して起こる感情」であると同時に、「感情を起こさせる雰囲気」と書いてあって。

―― 雰囲気? 要は氣なんですか?

はまちゃん 僕らの概念で言うと氣っていう言葉になっちゃうんだけど、波動というか……。その波動を自分事として一度とらえて、自分のなかでめぐらせていく。
つまり、「目の前に起きている現象は全部自分でもあるんだ」ととらえた時、起きていることが全部自分のなかに入ってくる。ただこれを、「相手の氣を受けてしまう」というとらえ方もしていたと思うんですね。
この氣を受けてしまう状態って共感性が強いわけだけど、そういう状態って意識の力は弱くなってしまう場合があるんですよ。生きづらいなと感じている人って、そうなんだと思うんですね。

―― 意識が弱いっていうのは……。

はまちゃん 意識的ではなくなってしまうというか……。僕は、意識は心臓の奥の奥にあって、魂みたいなところとつながったものだととらえていて。
共感性の強い人って、自我もないけども、この魂の火も弱くなってしまうことがあると感じるんです。

Note.4

対話をやっている
⚫︎対話」のプロセス
・肩書きや立場をいったん横に置く

・場をコントロールせず、起きることをただ受け入れる

湧き上がってくる言葉を出しあい、
思いを重ねていく


意識の力は弱くなってしまう場合
「共感性が強くなる=意識が弱くなる」は、しかたないことなのか?


―― たしかに、意識の力が弱いと生きづらいし、つらいですよね。やっぱり、共感性を高めつつ、意識の力を取り戻すということが、いま必要かなと思って。

はまちゃん いままではそこが難しかったんです。共感性を持つと意識の力が下がってしまうっていうのは、どうしようもないことだったと思うんですね。

―― 対話でも似たことを感じるんですけど、いま、そこが変わってきているんですかね?

はまちゃん 「木・火・土・金・水」の五行論をベースに考えると、共感性に関わる金に対して、意識に関わるのは火だと言われていて、金と火は相克の関係にあるんですね。
つまり、共感性(金)が高まると意識(火)が抑えられ、逆に意識(火)が強くなると共感性(金)が減少する……。
そういう現象が起こりやすかったところがあるんですけど、最近、ちょっと変わってきているなと思っていて。たとえば、うちに治療に来られる方って、飼っている動物とか子供の不調を訴えることも多いんです。
そうした場合、まず本人を診て、その人の潜在意識が上がった瞬間、動物や子供の症状が消えるんです。
要は、自分のまわりで起きていることは、自分の内面にあるものの投影であるということに気づいた時、相克から抜け出るチャンスがあるわけです。

―― 相克や相生が絶対ではなくなってきているんですかね?

はまちゃん いま、(五行の仕組みによって成り立っていた)三次元世界をみんなで出ようとしているので、わざとそういう現象を自分で起こしているんでしょうね。
つまり、自分で起こした現象を自分で体験することで、これまでの世界から抜けようとしているだけなんです。そこに良い悪いはなくて、みんな協力して、共振して抜けようとしているということなのかなと思いますね。

きょん2 ただ、感情に引っ張られるよね。意識が弱くなるのもそこなんだと思う。

はまちゃん 人間って感情が好き(笑)。それを味わいにこの世界に来ているんだって、自分でも気づきだしたんです。全部体感したくてやってるんだなって。

きょん2 ただ、感情を喜ぶんじゃなくて。

はまちゃん もちろん感情は大切なんだけど、僕自身、感情と意識がくっついてしまっていることに気づいたんです。
僕たちの本質は、本来、感情と離れた意識にあって、そこから感情をとらえる感覚をつかむことで引っ張られることが少なくなっていくと思うんですね。
いま、地球自体が変わってきて、これまでの感情や思考でとらええていた世界が変わってきていますよね? 葉山でも、ヨガや瞑想を日常に取り入れる人が増えてきているけど、それも地球の変化に乗っているからなのかな。

―― フェーズが変わってきているわけですね。

はまちゃん だから、「ああ、気持ちいい」みたいな感覚を大事にしたほうが変化しやすい気はします。
そうした波動を意識でとらえていると、重い波動が上がっていって、ある瞬間、パカンって抜けていくというか。重い波動が自分を上げていく力になるんですね。

―― 病気とか症状って、その意味でも必要ですね。

はまちゃん 症状は重い波動ですし、現象でもあるので、それをつくりだしている波動に意識で触れることで、その人の抜けるタイミングが生まれるかもしれません。

―― ただ、重い波動に取り込まれて、悪い方向に行ってしまうこともありますよね? その意味では、どちらに向かっていくか? 選択する瞬間がありそうな……。

はまちゃん 地球って体験型の星だから、いずれにしても、必要なことを体験するようになっていると思うんです。頭でわかっていても、体験しないと動かないから。

―― 体験するために生きている。

はまちゃん だから肉体があるんだなって思いますよね。

―― はまちゃんの話を聞いていて、何かを良くしようという意識が、かえってうまくいかない原因をつくったりすることが多いなって、あらためて思いますね。

はまちゃん 解決、解消しようとしない。対処してもいいんだけど、本体を動かす、アクセスするほうが大事ですね。

Note.5

五行論
相生 互いを育て、助ける関係
相克 互いを抑制し、バランスを取る関係


―― これからどんな変化が起こるって感じていますか?

はまちゃん 先日、友人で画家のやまちゃん(山田祐基さん)と、屋久島の宮之浦岳を4泊5日で歩いたんですけど、この間、現象化するスピードが異様に早くて。
いままでは現象化のタイムラグを現実と呼んでいたと思うんだけど、屋久島ではそれがバラバラで、一人一人に起きていることが違うんです。たとえば、天気の話一つとっても、みんな言っていることが違っているというか……。

―― そういう時間感覚のなかで何を感じた?

はまちゃん 屋久島っていう島自体が女性と同じ構造をしているなっていうことに、僕なりに気づいて。
今回、たまたま宿泊したところが、島の南部のモッチョム岳っていう切り立った山のふもとにあって、ここは屋久島の外輪山の一部でもあるんですね。
現地に行ってわかったんですが、このモッチョム岳が女性器の入口で、この中に宮之浦岳や永田岳があって、宮之浦岳の手前に花之江河っていう大きな湿原があるんですけど、ここがもう多次元世界そのものという感じだったんです。

―― 多次元世界っていうのは……。

はまちゃん 霧のなかに包まれるみたいな感じで、交感神経が動かなくなって眠くなってくるんですよね。
「登頂は翌日にしようか」って休んでいたら、山から降りてきた日本人の登山者に「9月の台風で登山道が崩落していて、ロープが張ってあって登れない」って言われて。
「ああ、そうなんだ」と思っていたら、その2、3時間後、今度は陽気なオーストラリア人の登山者が降りてきて、「宮之浦岳は最高だった」って(笑)。
僕もヤマちゃんもそういう世界を毎日のように感じていたからあまり驚かなかったけど……。
翌日登った時にはロープなんかまったくないし、無事に登頂もできて、「いったいどこが崩落してるんだろう?」みたいな(笑)。順次に違う現実がやって来て、一人一人が完全にパラレルを経験しているなって感じたんです。

きょん2 そういう意味で多次元なんだね。

はまちゃん 屋久島の登山で触れたなかでいちばん大きかったのは、たぶん、母性だと思っていて。
母性、女性性は陰性のエネルギーでもあるんですが、それは生み出す力、創造する力でもあり、それがこの島の現象化、現実化のスピードの源でもあるのかなと。
雨の多い屋久島は水が豊富なんですが、この水が自然のなかで循環していて、水という陰中の陰のエネルギーが流動することで陰性が解放されるというか……。
これって、人も同じなんです。水の滞りが流れることで潜在的な不安が顕在化しますが、そこに意識(火)を向けることで不安は創造の力に変換されていく。
そして、この水(陰)と火(陽)の和合したエネルギーが、固定化されていた陰陽の世界を抜けて動きだし、自然(環境)と人、どちらも主体になりえる世界になっていく。
それがもしかしたら「縄文」とは違う、これからの時代の新しい世界じゃないかと感じますね。

―― 過去に回帰するのとは違うわけですね。

はまちゃん 陰陽が分離した世界を体験するというフェーズが終わって、縄文的なものがアップデートされた、新しい世界がこれから来ると思うんですよね。
陰と陽が出会って変わるのではなく、個人個人のなかで陰陽が立ち上がってくるというか……。その意味では、男女のあり方も変わっていく気がしますね。

きょん2 男女の恋愛って、基本感情だしね。そこじゃないということなのかも。

はまちゃん これまでは、それが気持ち良くも悪くもあった(笑)。固定化された陰陽が解体されるというか、陰陽の分離のない、一つの世界のなかで満たされる世界になっていく……。
それを僕たちは体験していくんだと思うし、自分もその流れのなかを生きている気がします。

Note.6




モッチョム岳

宮之浦岳
Instagram「yama.da.yuki」より


―― いま、社会や将来の展望が見えず、不安や恐れを持っている人も多いと思うんですけど……。

はまちゃん 不安と恐れって、これまでは現実とひも付けて「これがあるから私は不安です」ってなっていたと思うんだけど、現実は現象であるわけですよね?

―― ああ、潜象ではなく現象……、目の前に起こっていることに対して不安を感じるっていう。

はまちゃん でも、自分自身が潜象であるとしたら、現実があるから不安なわけではなく、自分自身に不安があるから不安という現象が起こってくる。では、不安って何なのかというと、僕は流れない水だと感じるんです。
身体的には、にある一定数の水が溜まってしまった状態になると不安が起きるんです。

―― 出来事に対して不安が生まれるわけではない、自分がつくっているということ?

はまちゃん 地球の重い波動と関係していると思いますけど、不安が起こるということは、ある意味、流れない水に蓋をして溜めているということなんです。
不安になると水を飲むパターンが多いんですけど、いまはみんな「水を飲め、飲め」って言いますよね。これって、そうやって不安を減少させようとしている面もあって。
僕たちの若い頃って、運動中に水なんて飲ませてもらえないし、空調も効いてない真夏の体育館でやっていたけど、熱中症になる人なんてあまりいなかったでしょう?

―― 急に言われてきた感がありまよね。

はまちゃん じつはずっと水を飲ませると、車のエンジンの水冷式と同じで、水が回って冷やしてるのに、回っていないところに水を突っ込むからラジエーターが壊れるんです。
つまり、過剰に水を飲ませるから熱中症になるわけで、それよりも塩を摂って水の流動性を良くしてあげたほうが、熱中症は圧倒的に防ぎやすいんですね。
そもそも、熱中症が先なのか? 猛暑が先なのか? 最初に話しましたけど、そういう疑問もありますよね。

―― 水を摂るかどうか、猛暑かどうかというより、根底には流れない水、不安があるという……。

はまちゃん それが地球の重い波動の現れなんだと思いますね。そういう重い波動に感情や思考で反応してしまうと、地球や人のもっと深いところにアクセスが向かないわけで……。

―― それが蓋をしてしまっているということ?
はまちゃん これまでの地球のあり方としてしかたなかったし、意識を向けることも難しかったので、溜めた状態でバランスを取っていたんだと思います。
それは個人も社会も同じで、ある意味、溜めた不安に蓋をし続けるために、自分の時間を売ってお金を稼いでいた。
「金がないとつねに不安になる」というのはそういうことだったんでしょうけど、お金では蓋をしきれないので、永遠にお金を稼ぐスパイラルが続いていくわけで……。

―― いくらお金があっても不安は解消されないですね。

はまちゃん これまでは、お金が内在する不安に蓋をするための道具だったということでもあると思うんです。
でも、そのためにお金を稼ぐって、不安や恐れを潜在化しつづけることでもあると……。
逆に、不安という水の滞りのエネルギーに意識でアクセスしたほうが、お金は流れることに気づいたんです。
―― それって、意識全体に言える話なので、個々の体験に終わらない話だなっていう気がしますね。

はまちゃん 僕はそう思いますね。コロナ禍という時間もそうだったと思うんですが、不安を顕在化させてきたことによって、社会が逆に変わっていく。
その意味では、不安を解消するためのお金が必要のない社会に向かっていくのかもしれません。

Note.7


腎臓を中心としたエネルギーの流れ。東洋医学でいう五臓(肝・心・脾・肺・腎)の一つ。




きょん2 はまちゃんの治療を一回体験したくなったな。

はまちゃん ある時期から、頼まれた人には美容鍼をやっているんだけど、その人を一番深い闇のところ……、重い波動のところにただ意識を向けると間違いなく綺麗になる。そこにグラウンディングしたら一気に変わってくるんです。

―― さっきの流れない水の話とおなじですね。

はまちゃん 女性にそのことを言うと、みんな「やります」って(笑)。女の人ってすごいなと思って。

きょん2 私もめっちゃやりたくなった(笑)。

はまちゃん 女性は、いまいるところから抜けだしたいんです。地球と女性はある意味一体なので、地球が抜け出したい。これは、地球規模の陰性の解放なんじゃないかな。
男性にも陰性はあるから、女性に限らないんだけど、見えないように、みんなで重かった陰性に蓋をしちゃっていたんですね。

―― でも、その蓋が外れてきている感じなんですよね。

はまちゃん 重いものがじつは重くなかったんだって気づけると、一番いいと思いますよね。
そのためには、そこに意識を向ける……、個人で向けられないものは、必ず対面に現れてくれるので、その意味では全部が自分だし、その全部を通してそこにアクセスしていく……。そうやってみんな変わっていくんだと思います。

―― 蓋が外れて、いろいろなものが現れてきそう。

はまちゃん 顔を晒すことって大切なんだと思います。観測者と非観測者の話をしましたけど、要はありのままのいまを誰かに観測してもらう、これが自然界の流れだと思う。
顔を綺麗にしたいと思うのは、波動の上がった顔を通して共振したいからなんだと思います。そうやってこの世界が共振して、波動を上げていくわけで、美容って舐めたもんじゃないなって、最近、気づいたんです(笑)。
ちょっと顔をリフトアップしたり、整形をしたりではなく、その人の波動を引き上げる。そうすると、それを観測したいと思うし、本人も見てほしいと思う。

きょん2 顔は見せたほうがいい。出たくないとか言ってる場合じゃないんだよね。

はまちゃん もちろん、無理のないところで。僕だって、見せたくない、出したくないという水の滞りはあるけど、でも、お互いに受信しあいながら、共振しあいながら……、人も地球も美しくなっていくのかな(笑)。

―― 最後に美容の話になるとは思わなかったな。でも、全部の話がつながっていた気がします。

はまちゃん こんなとりもめもない話ですみません。ただ単に話したかっただけなのかも(笑)。

―― いやいや、じっくり対話できて、大事な場所につながった気がします。この続きはまた。

はまちゃん はい、ありがとうございました。

Note.8