萩原美智さん Michi Hagiwara
萩原美智
一般社団法人「はっぷ」理事。「養生」担当として、身土不二を大切にしたお茶や手しごとを通し、季節の養生法を伝えている。また、新しい命を育む母親のサポート事業「MOMAND」代表。アロマセラピスト、薬膳師としても活躍。日々の活動のなかで「多世代がまざり合い、季節の移り変わりを味わい、ともに楽しみ、学び、認めあう喜び」が「生命を養う」ことを実感。横須賀市秋谷に在住。三浦半島のおいしい産物と美しい夕景が大好き。
https://momand.jp
収録:2024年9月5日 @ハニカム出版スタジオ
編集:
長沼敬憲 Takanori Naganuma
長沼恭子 Kyoco Naganuma
撮影:井島健至 Takeshi Ijima @葉山マルシェ
―― 前回お会いしたのは、一年くらい前でしたね。もう何を話したか忘れてしまったくらいなんですけど……。
みっち 本当ですよね(笑)。何を話しましたっけ?
―― はっぷの話はもちろんですが、お仕事の話も聞いたと思います。普段はボディケアをされているんですよね? サロンをされているんでしたっけ?
みっち 産婦人科と連携して、アロマ、タッチング、傾聴などを通した産後のケア、出産によって変化するママたちの生活スタイルをサポートをしています。
お母さんたちは子供を産むと、育児のほうへグッと気持ちが向かってしまうんですよね。でも、自分のことを大切にしたい人も増えてきていて、そのために何をしたらいいのか? 一緒に考えることもしていますね。
―― 自然や身体にもともと興味があって、それがいまの生活の軸になっている?
みっち はい、自然と身体のつながりが、私の軸になっていますね。
―― はっぷでの活動は何年ぐらいになるんですか?
みっち スタートの時からいるんですが、最初は小さな子供たちをみんな抱えていたので、子供たちも一緒に、畑でしごとをしながら過ごしていましたね。
そんなつながりが、もう10年以上前から続いています。
―― それがだんだん形になってきたという感じですかね。
みっち はい。一般社団法人を設立して8年になるんですが、いまは会の運営とか、私たちが一番苦手としていることをやらなきゃいけないところにいます(笑)。
最初は「はっぷって何?」という反応でしたが、いまは知っていただける機会も増えて、活動も多岐にわたってきたので、その分、説明が大変になってしまって(笑)。
―― (『葉山和ハーブ手帖』を指しながら)この本を出すことで、だいぶ変わったんじゃないですか? これだけの内容、よくつくられましたよね。すごい一冊です。
みっち ありがとうございます。おかげさまで、「おばあちゃんたちと楽しく活動している人たちね」とか、「植物あそびしてる人たちね」っていうところは伝わってきたかな(笑)。
―― はっぷというとハーブが思い浮かびますが、最初から植物にフォーカスした活動だったんですか?
みっち 最初、私個人の活動になるんですが、高齢者施設に訪問して、マッサージをしていたんです。
でも、気持ち良くなるのは一時的で、一ヶ月後に行くと身体が石みたいに硬くなっていることもあって、どうしたらいいんだろうって悩んでいたんです。
そんな時、「みんなで畑に集って植物を育てよう」って、代表の大橋(=大橋マキさん)が旗を上げたことを知って、「すべてが解決できる」って直感で参加したのがきっかけなんです。私、幼少期は九州の山の奥で育ったんですが、はっぷの活動はその時の体験がリンクしているんですよね。
―― 九州のどちらの出身なんですか?
みっち (宮崎県の)高千穂です。私自身、自然のなかで多世代で一緒に過ごしたことがとても豊かな思い出になっていることもあって、「みんなで集えるところがつくれたら理想だなあ」って、活動を始めたところがあるんです。
以前は、お母さんのケアはお母さんのケア、おばあちゃんたちのケアはおあばあちゃたちのケアという感じでしたが、いまはそこがまるっとつながっていく感覚があります。
―― なるほど、つながったんですね。
みっち まるっとつながる感覚は、九州にいた幼少期の感覚で、こっち側で子供たちが遊びながら、傍でおばあちゃんたちが何か収穫してきたものを剥いていたりとか、特に何をするわけじゃないんだけど、「みんなでいる」ところがすごく心地よかったなと感じていて。それを地域でつくれたらいいなって。
―― 「みんなが集まれる場所をつくりたい」という思いが原点にある感じなんですね。
みっち ママたちって、バタバタと忙しくて、いろいろと大変じゃないですか。でも、土や植物を触れていると、いつの間にか自分に還っていけるところがあって。
最初は子供を連れて、ご高齢の方と畑を耕し、植物を育てる活動だけだったんですが、いまでは「植物を通して、いろいろな視点でみんががつながっている」というのが、すごく豊かなことだなあと感じていますね。
MOMAND(ママンド)
臨床現場での産後サポート症例をもとに、妊娠中から産後の女性に向けてライフサポート事業を行っている。
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一般社団法人 はっぷ
三浦半島の葉山を拠点に、庭仕事や季節の手仕事、農福連携を通して幅広い世代の方と交流、葉山の暮らしや文化を大事にしながら、元気に動ける心と体を支えていく活動をしている。
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「葉山和ハーブ手帖」(一般社団法人はっぷ・刊)
©︎Hiroshi Inomata
春には桜の手仕事。
桜の花を摘み、お茶などに利用している。
季節の養生茶(右)の調合の一コマ。
和ハーブハイク。長老の道案内で季節の植物(和ハーブ)を観察し、葉山の自然を愉しむ。
地域の長老たちとしめ縄づくりの手仕事も。
地域の方と交流し、レシピノートを受け継ぐ。
―― そうした活動の延長で、お年寄りの方と一緒に時間をすごす機会が増えていった?
みっち そうなんですよ。たとえば、梅の時期だったら採ってきた梅をみんなで仕込んだり、綿を育てて糸を紡いだり、おばあちゃんたちに和食のレシピを教えてもらったり、地元の賢者と和ハーブを観察するハイクをしたり……、そういう植物とのつながりを楽しみながら続けてきました。
―― そんなふうに継続できたのは、やっぱり楽しいから?
みっち そう、楽しいから。やっぱりママたちが多いので、何か作業しながら、土いじりしながら「何つくる?」っていう話になって、「じゃあ、やろうか」っていう流れから、学校の部活のようにできていった感じですね。
―― お母さんどうしの対話のなかから自然に場ができて、無理なく続いているところがいいですね。
みっち みんな、「おばあちゃんたちと交流したい」っていう共通の思いを持っているので、最初は自分たちだけでやっていたことも、「あのおばあちゃんのレシピ、美味しいらしいよ」って聞いたら、お呼びして教えてもらったり。
―― おばあちゃんの智慧を受け継いで、次の世代に伝えるということにつながっていくといいですね。
みっち それは本当に私たちが思うところで、まだまだそこまで行けてないんですけど、いずれはそういうことをやっていけたらいいなと思っています。
―― お話を聞いていると、マッサージをするというところからすべてつながっている感じがします。
みっち 最初は施設に行って、トリートメントマッサージをやっていたんですが、そういうタッチング、手技を全部やらなきゃいけないかって言ったら、そんなことはなくて。
ちょっと動く時に手を添えたり、手を握ってあげたり、寒くて手が動かない時は、お湯に浸かってもらって、マッサージしたりとか、クリームをつくって塗ってあげたりとか……。そういうことのほうが日常に馴染むなと思っていて。
もちろん、マッサージも素晴らしいと思うんですけど、(はっぷの活動を通して)もっと日常のなかに広げていくというところに、私はしっくりきた感じがあるのかもしれません。
―― 「互近助ガーデン」の活動も、こうしたふれあいの延長で生まれていったんでしょうか?
みっち 「互近助ガーデン」のつながりは、地元の皆さんはもちろん、施設のおばちゃんたちも参加してくださるんですけど、一般的なレクリエーションって、形だけやってもらうような感じになってしまうことが結構あって。
「心から楽しいって思ってもらえることができないかな?」っていうことで、昔、植物を育てていて大好きとか、縫い物をやっていて手先がとても器用だとか、いろいろな得意ごとを持ってる方っておられるんですよね。
だったら、まず植物が好きな方を「互近助ガーデン」にお誘いしてみようっていうことになって、趣旨をお伝えして、施設の方に連れてきていただくようになったんです。
皆さん、車いすに乗っていたり、杖を使わないと歩けなかったりするんですけど、土に触れるとすごいんですよ。
地面にしゃがんで草を引き抜きはじめたり、中腰で作業をしはじめたり……。もちろん、畑仕事しやすくなるよう園芸療法士のメンバーが工夫をして、道具などを使用することで、できないと思っていたことができるようになって、そのたびに施設の方はびっくりされています。
ご本人のやりたいという気持ちを優先し、小さな自信を重ねていくことが大事だなと感じますね。
―― いろいろと制限されていたものから解放されて、回復したりするケースが見られということですね。
みっち 土に触ったり、一緒に手仕事されたりすることで、認知症のおばあちゃんに変化が見られることもあるんです。
たとえば、おなじ場所を訪ねても「わからない」っていう場合が少なくないんですが、「互近助ガーデン」に来ると「ここ知ってる」って言ってくださったり、施設に帰ったあと、生き生きと報告されることもあるようです。
記憶ってつながるものだし、わずかな時間であっても一緒に過ごせたことが、とてもいい記憶として残ってくださっているんだろうなって思うんですね。
はっぷでは、葉山の古老の昔語りを聞き取り、その一部を『葉山和ハーブ手帖』で紹介している。
新倉豊一さん
鈴木和子 さん
柳 新一郎さん
地域の交流の場として、葉山の各所で「互近助ガーデン」を展開。シニアを含めた住民の方と、ガーデニング、ハーブ栽培などを楽しんでいる。
―― 葉山和ハーブの活動とガーデン活動、それぞれ2つに別れているようで、重なっているというか……。
みっち そうですね。重なり合って、相乗していますね。
――いま、はっぷの活動の拠点になっているのは、どこなんですか?
みっち これまでずっとキャラバンだったんですけど、ようやく葉山の海辺に拠点ができたんです。
オーナーさんは葉山で精力的に活動されている方で、長く地域活動を一緒にしてきたご縁もあって、私たちが場所を探していた時、有難くお借りできることになったんです。
―― これからどんな場所になっていきそうですか?
みっち 養生茶を製造するのがメインですけど、地域の皆さんにとって開かれた場所になっていけば素敵だなと思います。
これまで大楠山で活動されてきた皆さんと一緒に、毎月、植物観察をしてきたんですけど、その活動を発展させてもいいなと思っていて。
葉山には「健康の散歩道」ってあるんですが、地元の長老たちと一緒に、四季折々散策に出かけ、葉山探検するのもいいねってみんなで話していて、いまから楽しみにしています。
―― すごいな。多岐にわたりますね。
みっち そうですね。お茶づくりがあったり、手仕事があったり、養生のお話があったり、セルフケアをする時間があったり……、地域の人たちとさまざまな活動を通して、みんなが健やかになれるような通いの場をつくろうと動き出しています。
来年(2025年)くらいから、こうした活動を集約させていく感じになると思います。
―― なるほど。今年、これまでの活動がかなりブラッシュアップしていく感じなんですね。
みっち そうですね。女の人たちって、ライフサイクルがいろいろと変わっていくじゃないですか。
結婚したり、出産したり、子供が入学したり、今度は卒業したり……、いろいろあるなかで、みんなが関わりやすい、やりやすい方法を、今年はいろいろと考えています。
はっぷを始めた頃は土の上にゴロンってしていた小さな子供たちが中学生・高校生になってきたので、親であるみんなのライフスタイルも変わってきているんですよね。
ずっと同じ体制でやってると、将来、引き継ごうと思った時に引き継げなくなってくることもあるだろうなって。
―― 実際、そういうところって多そうですね。
みっち 先ほどの大楠山で活動されてきた皆さんも、今年で活動を締められるんですね。すごく良い活動されているんですけど、高齢化で運営が難しいって話されていて。
私たちが全部引き継ぐことは難しいけれど、何かつないでいけることがあったらいいなと思って。
―― そうか。そういった背景もあったんですね。
みっち だから、私たちも「どんなライフスタイルになっても活動に参加できて、みんなで回していけるスタイルをつくっていけたらいいね」って提案しています。いま、そういう課題のなかで、私もいろいろと動いているというところです。
―― 流動性があって、でもかっちりとしていて。そんなふうに運営できたらすばらしいですよね。
みっち やっぱり、線ではなく円(縁)というか、ぐるぐる回っていくというイメージが大事かなって。お年寄りから赤ちゃんまで、地域で暮らしている皆さんがまるっと関わっていけたらいいんじゃないかなと思うんですよね。
―― いま、はっぷに入会・参加している人たちは、お母さんたちが多いのですか?
みっち 多いですね。ただ、コロナ以降は、私たちよりも年上の方たち、リタイアまではしてないんだけれど、「これまでお仕事で培ってきた自分のスキルを何か活かせないか」ということで来てくださる方も、結構いらっしゃいます。
――会員の構成も、年齢を重ねて変化してきている感じなんですね。
みっち いままでのやり方で大丈夫だったことも、こういうふうに変化していったほうがいいよねって、ちょうど円を描くようなイメージを持って運営していく感じが、今年ぐらいから出てきているように思いますね。
私も含めてガッツリ関わることがだんだん難しくなってくるなかで、新しい方が入ってきたり、循環していく感じがすごくいいなって思っているんです。
―― そういう話を聞くと、とても関わりやすい感じがします。
みっち 本当に、それが理想的ですよね。
「はっぷ」の活動
■互近助ガーデン 風早茶房
第4月曜10:00〜12:00。認知症と共に生きるシニアの方と一緒に、コミュニティ・カフェ「風早茶房」のお庭づくりに取り組む。シニアの方の介護予防、リフレッシュ、地域貢献、やりがい創出などの場となっている。
■互近助ガーデン 葉山かどくら耳鼻咽喉科
第1水曜11:00〜12:00。葉山町一般介護予防事業「みんなの貯筋」プログラムとして、参加者である地域のアクティブシニアの皆さんと、前半はヨガなどの貯筋運動、後半はガーデニングを行っている。
■互近助ガーデン 葉山マルシェ
第1木曜10:00〜12:00。認知症と共に生きるシニアの方とハーブ栽培を行う。地域の飲食店へのハーブ販売、蒸留水販売など、地産地消によって運営している。
■オハナの家Hale一色
奇数月第3月曜10:00〜12:00。屋外での活動が難しいシニアの方と四季の植物を使って室内クラフト、ハーブ手浴などを楽しみ、交流機会を設けている。
■ハレハレデイテラス
偶数月第2火・金/交互13:30〜15:30。デイサービスの比較的お元気なシニアの皆さんと室内クラフト活動を楽しみ、季節のアクティビティを届けている。また、庭のメンテナンスを行い、栽培した植物をクラフトに活用している。
■横浜なみきリハビリテーション病院
第2・4木曜9:30〜12:00。中長期のリハビリ入院患者の方に向けに園芸・植物リハビリプログラム(室内・屋外)を届け、ガーデン計画とメンテナンスを行なっている。
■「季節の養生茶」調合
第2月曜 半日/終日。はっぷで栽培するハーブや地域の植物を活用し、四季の養生茶を調合。デイサービスのシニアの方に素材加工の一部を担う。調合した養生茶は、活動時の水分補給に役立てるほか、葉山マルシェ、水曜堀市、HAPP STORE(オンライン)で発売中。
■その他
部活動として、綿仕事(綿部)、季節の手仕事、葉山和ハーブハイクなども。詳細はお問い合わせください。
―― お茶をつくりはじめたのは、わりと早かったのですか?
みっち お茶は、結構早い頃からつくりはじめていましたね。みんなで手仕事をしている合間に、「なんかビワの葉っぱ、お茶になるらしいよ」「だったら、ちょっとやってみようか」みたいな会話があって、そこから始まった感じです。
「ビワ茶って美味しいね。じゃあ、ちょっと焙煎とかやってみようか」って言って、焙煎してみたらさらに「美味しいね」って、そうやって探究が始まっていったんですね。
それで、「季節ごとに何が採れるんだろう?」「ブレンドにはどれとどれが合うかな?」とか考えながら、いろんな食材のなかから茶材になるものを試したんです。
―― 僕たちもいただいたことがあるんですが、ブレンドの組み合わせがすごいですよね。
みっち それは本当に嬉しいです。葉山マルシェなどで販売が始まったばかりで、細菌検査なども完了して、ようやく販売が広げられそうなんです。(サンプルの茶葉を出しながら)よかったら召し上がってみてください。
「枇杷葉湯」と言って、江戸時代に暑気払いとして振る舞われていたお茶なんですよ。レシピは葉山バージョンにアレンジしていて、ちょっとお腹を下していたりとか、季節の変わり目の体調を崩しやすい時にとてもおすすめです。
―― (お茶をいただきながら)すごい。ビワ、シナモン、生姜、無花果の葉などがブレンドされてますね。
みっち ビワの葉って、お薬の木って言われるぐらい薬効が高いんです。和ハーブティーなので「和」をイメージしつつ、シナモンも入っていて、いい塩梅ですよね。
―― いやあ、コラボレーションが素晴らしいですね。
みっち これなら、シナモンが苦手な方でもいけるかなと思っていて。お茶でいただくのもいいですけど、お酒とかみりんにつけるのもおすすめです。
私は、梅ジュースをつくったあとの梅とこのお茶を煮出して、お砂糖とか蜂蜜を加えたものをジュースにしていただいています。
スパイスの効いた梅の甘露煮みたいになるので、これもすごく美味しいんですよ。
―― 結構な手間ひまがかかったんじゃないですか?
みっち はい。この形にできあがるまで、養生茶チームで何回も試作して、3年ぐらいかかりました。「商品つくろう」ということがベースにあるわけじゃなく、楽しみながら丁寧に、収穫から加工まで計画をしてきた感じですね。
本当にいろんなものを試しているんですけど……、商品にするので手に入りやすかったり、加工しやすかったり、検査に出して菌が発生しにくいものを厳選して、最終的に季節ごとの4種類のお茶が完成したんです。
―― そうか、季節の4種類なんですね。
みっち そうなんです。パッケージも完成して、販売もしていますので、ぜひご用命ください(笑)。
―― 葉山のお土産の一つにもなりますよね。
みっち 葉山のふるさと納税の返礼品にも登録したいなと思うんですけど、大量につくれるものではないので、ハーブ摘み体験とセットで、参加者はお茶も楽しんでいただけるようなスタイルもよさそうだなって思いますね。
販売ということでは限定的ですけど、さまざまな人に「お裾分け」する気持ちでつくっていけたらいいですし、皆さんに楽しんでいただいて、はっぷや葉山を知っていただけるようになったらいいなと思っています。
―― 逆に、貴重なお土産としていいかもしれませんね。
みっち そうですよね。私は薬膳師でもあるので、生薬のブレンドも意識するようにしています。
和ハーブティーということで、生薬の考え方とはちょっと違うとしても、エッセンスは入れているので、季節に合わせて身体を整えるお茶にしていただけると嬉しいです。
―― 日常に取り入れていくと、すごく整いそうですよね。
みっち そうなんですよ。秋のお茶は紅茶なんですけど、ケーキに入れたりしてもすごい美味しいんです。葉山の季節を感じていただけるひと時にしていただけたら。
葉山マルシェ
神奈川県で初めて肉牛の農場HACCP認証を取得した石井ファーム直営店。石井ファームで育った牛肉、地場野菜のほか、美味しいお弁当販売も。はっぷ季節の養生茶も購入できる。
https://hayama-ishiifarm.com/marche
お茶をいただきながら
季節の養生茶(春巡茶、枇杷葉茶、秋香茶、和ハーブチャイ)©︎Hiroshi Inomata
「タルトメゾンハヤマ」の焼き菓子と養生茶のコラボクリスマスギフト。
「逗子葉山常備菜研究所」とのコラボで生まれた「藍葉とひじきのふりかけ」
冬の養生茶「和ハーブチャイ」の茶葉。
*養生茶は、葉山マルシェ、水曜堀市、HAPP STORE(オンライン)で発売中。
★HAPP STORE(オンライン)
https://happhayama.stores.jp/
―― 和ハーブの本をつくろうと思ったのも、いろいろなものを積み重ねていった結果なんですか?
みっち 手仕事をやっていくなかで感じてきたことだったり、はっぷの活動を知っていただきたい思いだったり……。それまで名刺代わりになるものが何もなかったので、活動について説明するのがとにかく大変だったんですね。
―― 何かそれはわかるなあ。
みっち 「これもやってます、あれもやってます」って言うのが大変で(笑)。「何かひとつお渡しすれば、わかっていただけるようなものがあったらいいね」というのはありました。
あと、おじいちゃん、おばあちゃんたちから伺ってきたお話も皆さんにお伝えしたいという思いがあって、「一冊の本ににしよう」ということになったんです。
―― 知恵を受け継いでいきたいという思いもあったんですね。
みっち おじいちゃん、おばあちゃんたちの知恵って本当にすごいんですよ。「これはつないでいかなきゃいけないな」って、みんなで思ってきたんです。
皆さん、話すことのほどでもないと遠慮されるんですけど、手仕事を通して心が開いていくと、本当にいろいろなことを教えてくださるんですね。
ちっちゃい時の遊び方だったり、植物の活用法だったり……、そういった知恵も伝えていきたいっていう思いが本をつくったきっかけになりましたね。
―― 制作は、結構大変だったじゃないですか?
みっち めちゃくちゃ大変なんですね、本をつくるって。私の一年をほぼこの本に捧げたって感じです(笑)。
―― コアのメンバーで分担を決めてつくっていったんですか?
みっち そうですね。本当は、もっと膨大な感じだったんですけど、自分たちで編集して、私たち自身がつくりたい本を、私たち自身でつくるという感じですね。
そういうふうにやろうって決めてやりはじめたから、どんどん膨大になっていって、これは省けない、あれも省けないっていうものがいっぱいあって(笑)。予算の関係もあって、頑張ってコンパクトにはしたんですけど。
―― みんなで編集していったんですか? それにしてはクオリティがすごく高いですよね。
みっち それは、最高に嬉しいです。制作については、運営の大橋が取材と全体構成と編集、私は養生レシピのページ、同じく運営の丸野(=丸野睦美さん)はお庭ページと……、それぞれ分担し、テキストは有志みんなで執筆しました。
ほかにも、イラストとデザインは、はっぷメンバーでスキルを持った方が担当してくださり、図鑑パートは、和ハーブ協会さんにご協力いただきました。個々の内容について、多くなって削ることはあっても、足りないから付け足してボリュームを出していこうということは一切なかったです。
―― 雑誌をつくる時の印象に近いですね。必要な要素を盛り込んで、それをどう見せるか? 雑誌は活字だけでなく、ビジュアルも大事になってくるので。
みっち そうですよね。見ていて楽しいものがいいですからね。
四季に分けて構成しているので、それぞれの季節になったら開いてもらって、いろいろ調べたり、できることを楽しんでもらったりすることをイメージして取り組みました。
―― 楽しみながら自然に積み上がっていくなかで、お茶をつくったり、本をつくったり……。こだわるところにこだわって、いいものつくっていますし、すごいなって思いました。
みっち 結果として、みんなの力でいいものができたのだと思います。義務で関わっているとか、何かの意図を持って関わるみたいなことって全然なくて。それって、自分たちが楽しむために活動しているからだと思うんですね。
―― 楽しいという理由だけだと、一時的に盛り上がって長続きしないことも多いですけど、うまくやってこれたのは何が良かったからだと思いますか?
みっち 私たちは植物をテーマの中心に置いて、高齢者の皆さんと多世代で集うというところをベースに「好きなことをやる」っていう感じなんですね。
そういう核、中心に引き寄せられるものがあるので、まとまってやってこれたのかな。
―― みんなで共有できる普遍的なテーマがあったからなんですね。
みっち そうですね。ただ美味しいお茶をつくるのが目的でなくて、そこからいろんなことにつながっていくと思うんですね。
たとえば、一杯のお茶が呼吸を整えて、心をゆるめることにつながったり、自然と心身のつながりを意識したり……、私たちは、何かそういうものをつくりたかったんですよね。
―― お茶を介して広がる世界が大事なんですね。
みっち はい。「お茶をつくろう」ってなった時、コンセプトの共有をしていくなかで、そこを目指していくことが自然とできると思うんですね。逆にそういうものがないと、また違うお茶になってたかもしれないです。
―― 楽しいからつくるって、大きな制約がない分、みんなの気持ちを揃えることが必要になりますよね。
みっち 制約がないっていうことが、すごい大きいと思うんですね。はっぷでは、活動をご一緒する皆さまとの協力体制のなかでのフレームはありますが、基本的には、参加するシニアの方も、はっぷのメンバーも、その方の特技や思いを尊重して活動していくということを大事にしています。
―― 枠が強いと窮屈になっちゃいますけど、そうではない気持ちでやっているんですね。
みっち 基本的には、やりたい人がやりたいことを見つけて、スタートしているんです。そのなかで活動の軸がぶれていたら、「それ、こっちだよ」っていうことはあるんですけど、基本は「自由にどうぞ」っていう感じなんです。
―― あと、葉山という環境もはっぷの活動にすごく作用したと思うんです。この土地をどんなふうに感じていますか?
みっち やっぱり「葉山ならでは」のものを感じますね。本当に土地の力ってすごいなって思うんですけど、秋谷と葉山でも違うし、逗子や鎌倉も違う。それこそ一つの海岸線でも全然違うなって感じることがあると思うんですね。言葉にはうまくできない「葉山ならでは」っていう感覚というか……。
―― 葉山という場のなかで出会った人がいて、その出会った人たちと一つのことができて、つくられたものが実際あって、生まれてくる活動があるみたいな……。
みっち 葉山の人たちって、人とつながって何か起きるのが早いんですよね。同じ空気感を持っている人が多いというか、波長が合いやすいのかもしれません。
こうした同じ波長がたくさんあるのが、葉山ならではなのかな? 秋谷は、同じ波長というより、もうちょっとリズム感があって。葉山は流れるような、循環している感じですよね。私、感覚の人なので、こういう言い方しかできないのですが……。
はっぷの活動のひとつ、「互近助ガーデン 葉山マルシェ」の舞台である、上山口の「葉山マルシェ」にて。オーナーの石井裕一さん(石井ファーム代表)は「はっぷ」の活動に賛同、畑の一部を解放している。
―― 調和が感じられるということなんでしょうね。
みっち そう、「調和」というと、やっぱり私のなかでは多世代で過ごした幼少期の感覚が思い浮かんできて、それが心地いいなっていう思いがすごくありますね。
だから、それを求めたい、そのなかにいたい。葉山では、そういう調和が感じられます。
―― つながるのは自然だけじゃなくて、人もなんですね。
みっち 本当に自然を通してみんながつながっていくんですよね。子供たちも、私たちも、おばあちゃんたちも、自然を通して、植物を通して多世代でつながっていく感じですね。
―― お年寄りが元気になっていくのって、すごくいいなって。
みっち そこにいるだけで、自然と元気になれるってすばらしいことですよね。私たちもパワーをいただいていますし、葉山の土地って、それを実現しやすいところがあるんじゃないですかね?
もちろん、どこでも可能だとは思うんですけど、葉山はとても実現しやすいというか……、自然が豊かで、調和しやすい土地だからかもしれないですよね。
―― これからの新しいステップも、そういう土地の力を感じながら進んでいくのかもしれないですね。
みっち そうですね。どんな感じになるのか、すごく楽しみですね。計画は未定なんですが(笑)。
―― それが素晴らしい。いろいろ追いかけていきたいですね、すごく興味が湧いてきました。
みっち ぜひ遊びに来てください。いらっしゃる時は、何か活動している時がいいですよね。畑でもカーテンでもいいし、集いの場でもいいので、気軽にいらしてくださいね。
―― はい。今日の対話は、これぐらいにしましょうか。じっくりお話しできてよかったです。
みっち こちらこそ、ありがとうございました。