福田和則さん Kazunori Fukuda
福田和則
1974年、兵庫県生まれ。外資系金融機関勤務を経て、2007年にエンジョイワークスを設立。行政や事業者任せにしない「まちづくりや家づくりのジブンゴト化」による豊かなライフスタイル実現をテーマに、不動産及び建築分野において幅広い事業展開を行っている。2017年、空き家・遊休不動産の再生・利活用プラットフォームであるユーザー参加型クラウドファンディング「ハロー! RENOVATION」をリリースし、「まち」「ひと」「お金」の新たな関係性構築に取り組んでいる。https://enjoyworks.jp
収録:2023年10月26日 @楚々 葉山
編集:
長沼敬憲 Takanori Naganuma
長沼恭子 Kyoco Naganuma
撮影:井島健至 Takeshi Ijima @旧市営 田浦月見台住宅
―― インタビューというかしこまった感じではなく、対話という形で、言葉を重ねていけたらいいなと。どうなるかわからないですけど、おつきあください。
福田さん ぜひ、こちらこそ。おもしろそう。
きょん2 それぞれ肩書きや立場はあるけれども、いったん外して話すというのが対話ならではなので。
福田さん そのほうが型にはまらないかもしれないですね。なんの話からします?
―― 普段は鎌倉にいらっしゃるんですか?
福田さん オフィスは鎌倉だから、仕事のときは鎌倉に行きますけど、どれぐらいいるかな? 月半分いないかも。
―― 全国いろんなところに。
福田さん いまは地方が多いですね。昨日帰ってきたのかな。
大津さん(秘書) 昨日は尼崎ですね。
福田さん ああ、尼崎だ。商店街はめっちゃ盛り上がっていました、阪神タイガースの優勝で。
―― 都道府県で、もう回ってないところがないぐらいですか?
福田さん ほぼ行ってますね。最近は特にそうです。逆に、5〜6年前ぐらいまでは、葉山、鎌倉……、湘南エリアからは出ない暮らしでしたね。年に数えるくらい、それも東京に行くぐらいで、ほぼ出ていなかったです。
―― いま、広く展開しようっていう流れになったんですか?
福田さん そういうフェーズになったということですかね。
僕の場合、どちらかというと、「ビジネスという手段を使って、社会を楽しくしていきたい」という思いがあって起業しているので、テーマとしては「まちを元気に、楽しくするにはどうしたらいいか?」ということなんです。
で、葉山に来たら答えがあった。僕はそう思ったんです、17年前ぐらいに引っ越してきたときに。
(葉山では)立場もあまり関係ないし、男女はもちろん、年齢もあまり気にせず、みんなが楽しく、それこそ雑談なのか対話なのかわからないけど話をする場面って、たくさんあるじゃないですか。初めはそれが新鮮だったんです。
きょん2 東京の目黒から葉山に来られたんですよね?
福田さん はい。それこそ引っ越す前は、そこに住んでいるっていうだけ、職場との行き来だけ、休みの日も必ずどこか出かけてという暮らしでした。
ただ、子供ができて、最初は子育て環境を求めて来ただけだったんですが、そういうシチュエーションに出会って、おお、すごいなと。初めは結構衝撃でしたよ。
まちを楽しく、元気にする
Vision
資本主義のリノベーション
×
Value 「3C+E」
Challenge(まずはやってみる!)
Creation(既存の枠にとらわれない!)
Communication(気持ちよいコミュニケーション!)
+
ENJOY(自分が楽しければ、みんなも楽しいのだ!)
ーエンジョイワークスHPより
https://enjoyworks.jp/company/
きょん2 すぐ友達はできました? いるだけでは、なかなか友達できないところもありますよね?
福田さん 一つは子供とか、あとはサップをやっていたので海のこととか、犬を飼いはじめたりとか……。
きょん2 何を飼っているんですか?
福田さん ブルテリアを飼っているんですけど、うちの犬って歩かないから、一色の界隈でよく立ち止まってますよ。妻が真っ白なヤギみたいな犬と立ち止まってるところは、みんなにめちゃくちゃ目撃されています(笑)。
きょん2 じゃあ、今度、声かけてみよう(笑)。
福田さん まあ、そういうところがきっかけですかね。でも、当時、家を建てたばかりだったし、「引っ越してきたんですか?」と、声かけてもらうことも結構ありました。
最初は、そのこと自体も新鮮でしたね。
―― そうした体験があると、まちへの意識も変わりますよね。
福田さん 葉山で暮らすようになって、さまざまな出会いがあるなかで、一つは立場や肩書きも関係なく、なんなら名前も初めはよくわからない、ゆるやかなコミュニティ……。たとえば、海なら海で波があれば会う人みたいな。
いまは時間がなくてやってないですけど、こういうタイミングでサーフィンに行くと絶対に会えるとか、「ここに来れば、この人に会える」みたいなことってあるじゃないですか。
―― 確かに。葉山の空気感ってそんな感じですね。
福田さん そういう水平に広がる、フラットでゆるやかなコミュニティがある一方で、子供会とか神輿会とか、それとは逆の垂直につながる、古くからのコミュニティもあって。「祭りやるぞ」ってなるとバッと動くわけです。
(葉山には)そういう垂直・水平の2つのコミュニティが存在していて、場面に合わせて楽しめる環境がある、そこが魅力なのかなと思ったんですよね。
垂直・水平の2つのコミュニティ
―― それが、日常だけじゃなくて、仕事にもつながっていった?
福田さん そこは全然狙ってなくて、最初は「そういうコミュニティがまちを元気しているんだな」という気づきがあった感じですね。葉山の場合、自然が豊かという要素もあるけど、コミュニティの存在も大きいと思ったんです。
それで、コミュニティを起点とした地域の活性、まちづくりをやりたいと思うようになって。
とりあえず会社はスタートしていたんですが、地域活性なんていきなりできないですよね? コミュニティをつくって醸成していこうと思っても、当時は手段もわからない。
だから、シンプルに移住してくる人と出会って、徐々に友達になっていけば、結果そうなるかなと思ったんです。
―― その過程で物件を紹介したり?
福田さん いや、ただ物件を紹介して、買ってもらって終わっても、目的を果たさないじゃないですか。友達になりたいと思ってるわけだから、不動産の紹介よりも、まちの友達とかを紹介することを重視していたんですよ。
多分、自分の友達にまちを紹介するって、そんな感じですよね?初めは、それと同じでしたね。
きょん2 不動産のお仕事は、こっちに来てから?
福田さん そうですよ。順番としては、移住をきっかけに会社を辞めて、いまの会社をスタートしたんです。
きょん2 じゃあ。葉山の土地がそうさせたみたいな?
福田さん まさにそうなんですよ。「起業のきっかけって何ですか?」っていろんなところで聞かれるんですけど、本当にいまみたいな感じで始まったんです。
葉山の土地がそうさせたみたいな?
―― 東京いるときは、そういう思いはなかったんですか?
福田さん 起業したいって思っていましたけど、何で起業するかは決めてなかった、そんな状態ですね。
きょん2 それがいきなり不動産、お家を建てることにつながるというのは面白いですね。
福田さん 家って、買うにしても、借りるにしても、人生のなかで大きな決断の一つですよね? だから、皆さん、本当に真剣に考えるじゃないですか。
で、僕が考えてほしいと思っているのは、「どんな家に住むか?」ということだけじゃないんです。家そのものの価値ももちろんあるんだけど、「本当にそれだけのお金を払って、このまちのこういう環境で、こういう人たちと暮らすのでいいんですか? それが本当にやりたいことなんですか?」って。
やりたいことだったら、僕は(物件だけではなく)友達も紹介できるし、そういう人が集まるお店も紹介できる、まずそこを大事にしたかったんですね。
―― 正直、都心で暮らしていたら、そこまでのつながりって生まれにくいですよね?
福田さん 都心で暮らしていた頃って、いまより若かったこともあって、好奇心もあるし、インプットのほうを重視していて、新しいところへ行って、いろんな人に出会ったり、それはそれでその頃の自分に合ってたのかもしれません。
こっちにやって来たのは、子育てがきっかけだったこともあって、この地に根ざすみたいな思いが生まれたんでしょうね。そういう気持ちがあると、その場所を良くしていきたい思いも湧くし、友達も増やしたいと思うし……。
―― 自然とそういう気持ちに変わったんですね。
福田さん やっぱり居心地がいいから、(いまの暮らしを)手放す気はあんまりないんですよ。
きょん2 人のつながりもできちゃうから。
福田さん だから、本当にそこだなと思っていて。結局、いま人とのつながりとか、そのなかでの信頼関係とか、よくいうソーシャルキャピタルみたいな目に見えないものが貯まっていて、これも自分にとっての資産なんですよね。
僕の場合、家を手放しても、同じ地域にいるかぎり、これを手放すことはないと思っていて。
―― 住まいも大事だけど、それ以上に……。
福田さん そういう感覚の人たちがまちに溢れていると、別に自分の家とか土地という考え方じゃなく、まちにいる人たちとの関係性が大事になりますよね? そういうふうに生きている人が増えれば、きっとまちは……。
―― 文字通り、豊かになりますね。お金と同じような財産として、人の貯金みたいなものがあるから……。
福田さん 本当にそう。
―― 引っ越すとまたゼロから始めることになるわけだし、地域を大事にしたい気持ちも湧きますね。
福田さん そこが大事だなって思うんです。
ソーシャルキャピタル
社会や地域における、人々の信頼関係・結びつき。地位財(お金、社会的地位、モノなど)に対する非地位財(健康、信頼、自由、愛情など)にあたる。
きょん2 福田さんの話を聞いて、(岐阜県の)飛騨市の事例を重なってきました。
―― 飛騨市では、関係人口を生み出すことを市をあげてやっていて、いま、対話を重ねながら本をつくっているんです。『ことばの焚き火』の飛騨版なんですけど。
福田さん へえ、そうですか。すごいですね。
―― 葉山って、住んでいる人自身が「いい土地だな」って感じているところがありますよね? 飛弾市の場合、もちろんそう感じている人もいると思いますけど、それ以上に、外から見ていい町って感じる人が多いようなんです。
数字だけ見れば、人口は減っているし、過疎だし、観光資源も多くはない。だけど、それだけでは描けないまちの良さがあるから、関係人口が増えている。
その価値をどうやったら可視化できるか……、少なくとも言語化はできるんじゃないかというのがミッションで。
福田さん いや、絶対できると思うし、僕らとしては言語化だけでなく、そこを数値化できないかっていうチャレンジをしたい、いや、しようとしているんですよ。
それはウェルビーイングにつながる話だし、そういう角度からの研究もたくさんあると思うんですけど、いま地域に求められるのはそこだと思っていて。
それでいうと不動産だって一緒で、人口が減っているわけだから、日本の地価なんてこれから下がるに決まってる。そこにこだわる理由って本当にないと思うんです。
―― そこではない部分の数値って、具体的に何が……。
福田さん さっきのソーシャルキャピタルにしても、いくつか要素になるものがありますよね?
たとえば、共感性みたいなものとか。共感すると、何かをやるってなったとき、「じゃあ行こう」という行動につながるじゃないですか。その行動は数字に置き換えられるはずだし、そういう考え方はできると思いますよね。
―― そこにちょっと重ねると、飛騨の本には研究者が2人入ってるんです。彼らの研究の一つとして、心地よいコミュニティを成立させてる背景を解析していくと、起点になるのは友人・知人というキーワードになるというんです。
結局、友人・知人と知り合うことで、その地域にいろんな形でつながるじゃないですか。
つまり、友人・知人の背景に、町の歴史や文化、それにまつわるいろんな場所があって、お店があって、行為があって、本ではそれをアンノウン(unknown)って呼んでいるんです。
これって、福田さんがやってきたことと重なりますよね。
「飛騨発 つながりづくりイノベーション』より
福田さん なるほど。確かにそうかも。
―― 「アンノウンを持っている人と出会うと豊かさが得られる」と概念化されているんですが、その豊かさはリッチな豊かさではなくて、カルティベートされた豊かさ、つまり、土壌のように自分の内面が耕されるという……。
福田さん 本当にそうですね。
―― リッチを否定してるのではなく、そうしたカルティベートな豊かさは心身の健康、ウェルビーイングにもつながるというところまでは、解析をふまえながら言語化できる。いま、ウェルビーイングの潮流が出てきているので、そこにどう乗せていくかということを考えているんです。
福田さん やっぱりそうなんですね。さっき言ったように、わざわざ会いに行かなくても、この時間にあそこに行くと誰かいるんだろうなとか、それって安心じゃないですか。そこに地域で暮らすことの価値があると、僕は思っていて。
―― そういうことって、ガイドブックには書けない領域だけど、みんなが潜在的に求めているという。
葉山って、とくにそれが感じやすい場だと思うんです。
福田さん そうじゃないかと思いますね。もちろん、そこにあまり価値を感じない人もいるし、価値は感じているんだけど、ただ直感的に感じてる人、なぜ価値があると感じられるのかを理解してる人とさまざまだと思いますけどね。
関係人口
観光でも、移住・定住でもない形で地域に関わる人立つの総称。
ことばの焚き火
2022年、ハンカチーフ・ブックス刊。葉山での対話がきっかけの一つとなって生まれた一冊。
それだけでは描けないまちの良さ
★飛騨市のポイント
もともと住んでいた人は都市部に流出
↓
過疎化・人口減少
↓
外部の人が魅力を感じ関係人口は増加
この現象に、まちの人も再評価をはじめている
飛騨の本
「飛騨発 つながりづくりイノベーション』
(ハンカチーフ・ブックス刊)
*制作中だった一冊が、2025年4月、ようやく刊行された。
起点になるのは友人・知人
関係人口を構成する人たちは、友人・知人を介して地域の「アンノウン」(未知のもの)につながり、「癒し」以上の変容を体験していることが多い。
ーー2019年 全国アンケート調査 5000人のデータをもとに分析
★杉野弘明(環境心理学/飛騨市・未来のコミュニティ研究室メンバー)
リッチな豊かさではなくて、カルティベートされた豊かさ
(リッチ)
・効率性を重視することで得られる。
・成果は目に見えやすいが、限定されている。
・たくさん持つことで豊かになる。
・時代によって価値や評価が変わってしまう。
(カルティベート)
・時間をかけて育み、形にしていく。
・さまざまな要素が複合していて、限定的ではない。
・必ずしもたくさん持つ必要はない。
・豊かさの土台であり、普遍性がある。
―― こうしたつながりを事業にどうつなげていったのか? その経緯をもう少し聞かせてください。
福田さん (葉山に住みたいという人に)不動産を紹介することで友達が増える、しかも感謝され、お礼も言われるって、本当にいい仕事だなと思っていて。
それを不動産、建築とやっていくことで、たとえば、(葉山で)お店を始めたいっていう人が出てきたら、必要な人を紹介したり、オープンに向けていろいろとお手伝いをしたり……、そこでまたつながりが生まれますよね?
そうやって友達が増えてくると、「何かやろう」っていう話になるじゃないですか。
初めはイベントとか短期的なものが多いんですけど、そのうち事業をやろうということになってくると、お金もかかるし、うまくいったらみんなにお金を分配しないとならないので、ファンドを扱うことを考えはじめたんです。
僕はもともと金融の出身で、10年ぐらいそこから離れていたんですが、手法は覚えていたからいろいろ試そうと思ったタイミングで国の法改正があって。
たとえば、地域には空き家がたくさんありますよね? こうした空き家を地域のお金で利活用して、その地域を盛り上げてほしいというのが法改正の背景にあると思うんですけど、その結果、うちみたいな地域にある小さな不動産会社でも、小規模のファンドをやっていいことになったんですね。
それで、真っ先に手を挙げてファンドをスタートさせたら、全国初の事例になったんです。
―― それは何年前ぐらいの話なんですか?
福田さん 2018年ですね。それで、元町通り沿いにある蔵が一個目の事例になって……。
―― いやあ、ファンドにするとかすごい発想ですね。
福田さん たまたまそういう経験があったなかで、法律の改正があったので、やれそうだなって。
とはいえ、ただお金をまわすだけじゃなく、つくるプロセスにもどんどん参加してもらうようにしたので、一緒にやって楽しかったし、それが形になって、事業として回っていくことで、お金を出してくれた人にちゃんと分配もできて。
これは僕にとっての成功体験でもあるけど、国の政策でもあるから、国としての成功体験でもあったんですよ。
そうした背景もあって、このまちに仲間を増やすだけじゃなく、全国のいろんな自治体とつながりながら、地方創生によって日本が元気になることに携わっていきたいって、いまはいろんなところをまわっている感じです。
きょん2 大変だったことってないんですか? 蔵のプロジェクトも全国に展開してますよね?
福田さん やってみてわかったのは、こうしたやり方ってすごく手間がかかるんです。ファンドの額だって決して大きくないから、僕らの身入りもそこまでではない。
それ自体はビジネス的に合わないんだけど、「みんなの知恵を集めると事業がうまくいく」っていうことが明確にわかってきていて。いま、それなりの数の事業が立ち上がってきているんですけど、どれもうまくいっているんです。
面倒くさいけど、みんなでやると事業ってうまくいく可能性は高いんだと思えるようになってきました。
―― それは蔵だけでなく?
福田さん はい。平野邸や旧村上邸もそうだし、結局、地域の人とか所有者の方の意向を聞いて、どういう場所になったらいいのか、みんなでイメージする。
そのうえで、どうやってお金を生みだすか? ここがポイントで、お金を投資してくれる人がいるわけだから、皆さん、稼ぐことも考えてくださいねって。
稼ぐ形として宿業もあれば、カフェみたいなものもあるし、企業の研修所に活用したり……、事業体としては全部バラバラなんですが、みんなで考える点は同じで。
通常、新規事業を10個やって1個か2個しかうまくいかないものが、ほぼうまくいくって結構奇跡なんだけど、それはみんなで考えてるからうまくいく。
―― その事例を増やしてる感じですね、結果的に。
福田さん 増やすっていうことと、面白いなと思うのは、みんなゼロイチじゃないですか。
たとえば、蔵で宿をやるって面白いけど、儲かるかわからないし、リスクのほうが大きいってみんな言うわけです。でも、うまく行くと「うちもやりたい」という声が出てきて、大手企業とかも参加しやすくなってくるんですね。
だから、初めはまちの人が仲間だったのが、たとえば蔵だったら、「ああいう蔵を宿にするのが面白い」っていう都内の方とか、遠方の方も関わってくる。
その事業がうまくいきはじめると、次は大手企業、自治体が関わって、少しずつ輪が広がっていく。 そうやって地方創生的なものに近づいていくと思うんですね。
ファンドを扱う
2018年、全国初の「不動産特定共同事業法」に基づく 小規模不動産特定共同事業者登録を完了。
「ハロー!RENOVATION」を開設し、投資型クラウドファンディングをスタート。空き家・遊休不動産の再生・利活用を目的にした持続可能なスキームとして、全国で展開中。投資型クラウドファンディングを通して事業にも参加できる。
旧市営田浦月見台住宅
横須賀市
旧東伏見宮葉山別邸
葉山町
URASHIMA VILLAGE
香川県三豊市
元町通り沿いにある蔵
宿泊施設『The Bath & Bed Hayama』
@葉山町堀内
↓
宿泊施設『The Bath & Bed Hayama』
The Bath & Bed Team
〜「泊まれる蔵」プロジェクト
小布施と佐久穂(長野)、立山(立山)に続き、道後(愛媛)や、鹿沼(栃木)など、全国各地で展開中。
https://bathandbed.team
平野邸 Hayama
葉山堀内にある築80年の古民家をリノベーションによって再生。「宿泊」も「スペース利用」もできる「日本の暮らしを楽しむみんなの実家」として、利活用されている。
https://hiranoteihayama.com
旧村上邸(鎌倉みらいラボ)
荘厳な能舞台、連続する畳の間、複数の茶室、大きな庭がある鎌倉の旧村上邸をリノベーション、企業研修、保養、市民活動ができる場として生まれ変わった。
https://kamakura-mirai-lab.com
テラスなど敷地の一部をシェアして暮らす、ユニークな宅地分譲プロジェクト「エンジョイヴィレッジ」。葉山一色のほか、富山市、佐久市(長野)でも展開中。
エンジョイヴィレッジの住まいには「スケルトンハウス」を採用。柱や筋交いを最小限に抑えたシンプルな構造(スケルトン)であるため、家族構成やライフスタイルに合わせて、内装(インフィル)を自由にカスタマイズできる。
―― この段階に応じて仲間が増えるプロセスに、なにか共通していることはありますか?
福田さん 前提はやっぱり共感っていうか、好きとか、面白いとか、楽しいとか、そういう直感的なものがありますよね。
もう一つは、いま言った仲間の先にさらにステークホルダーがいて、それぞれに事情が違う。自治体だったら地域住民がステークホルダーだし、大手企業だと株主だし、地元企業だと地元のいろんな商店会のつながりもあったり。
こういう自分の先にいる、自分たちを支えてくれている人たちに、ちゃんと説明がついて、納得してもらえるっていう状況がみんな欲しいんですよ。
ただ難しいのは、そこまでいくとみんなバラバラなんです。大手企業の株主と地域の住民と、商工会のメンバーって、もう違う人たちすぎて、それぞれを合わせにいくのは結構難しい。
なので、こちらの事業の規模とかフェーズによって声かけていく人たちを変え、結果として全員が関われる状況をつくることにいま取り組んでいる感じですね。
―― つながり方を変えていくっていうことですか?
福田さん そうです。ゼロイチはどうなるかわからないから、地域に思いがあって、面白がってくれる人が中心になるし、さっき言ったみたいに、「これはうまくいく」ってなったら大手企業の人たちは来やすいから、そした事業のベースをやる側も意識するし、声をかける側も意識して変えていく。
地域創生をやっていくうえで、そういう人たちがステークホルダーとして重要だと言われてますけど、どう巻き込んでいけばいいか、それまでよくわかってなかったんです。
―― そこが、活動が小さなところでとどまるか、もっと広がるかの分岐点のように思えます。
福田さん 地域の住民、とくに地元の方だったら「今度イベントをやるから来てください」でいいんですけど、僕らも地方に行けば知らない人たちばっかりだし。
―― 工夫が必要になりそうですね。そういうやり方で仕事を広げてくスタイルは、新しいんですか?
福田さん やってる人はやってるけど、まだまだスタンダードではないですね。というのは、ビジネスって比較的短期で稼ごうとするじゃないですか。僕がいまやっているようなアプローチって、ある程度時間がかかるんですよね。
だって、事業を超えて育てていかなきゃいけないところもあるし、声かけた人たちにもきちんと説明をして、一緒に考えてもらうようなことをやるから。
きょん2 時間がかかる。
福田さん だから、よく言ってたのは、ギブ・アンド・テイクという言葉はありますけど、とりあえずギブ、いったんギブ、ずっとギブ……、多分どこかでテイクができるはず。
で、さっきのソーシャルキャピタルがビジネスにどう影響するかっていう話なんですが、お店を開けたいという人に物件を紹介して手数料をもらうって行為は他の不動産屋と一緒で、通常はそこで終わってもいいですよね。
だけど、事業計画が書けない、資金調達できないっていう人には、たまたま僕はできるから手伝って。ほかにも、オープンするのに設計できる人を紹介してほしいとか、町の人に知ってもらう手伝いをしてほしいとか、全部手伝うわけですよ。
―― それこそギブしていくわけですね。
福田さん はい、ギブ、ギブ、ギブですね。それで、どこかでお店が盛り上がったとき、お店に来てくれる人に、「この店はエンジョイワークスの人がオープンときに助けてくれたんだよね」って店主が話してくれたりするかもしれない。
引っ越したい人いるので紹介したいという話があったとき、「どうやって知ったんですか?」って聞くと、「どこどこのお店で評判を聞いて来たよ」って。
これはわかりやすい例になりますが、できることを提供しているネットワークのなかで、ビジネスを紹介してもらえることもあるんだなっていう経験につながるという。
―― おのずとそうなってったような感じ?
福田さん 意図してると打算的な動きになりますからね。気づいたらそうなんだなと、わかった感じですね。
旧市営田浦月見台住宅
横須賀市と提携、三浦半島の付け根、田浦の高台にある旧市営住宅の利活用事業を展開中。まちのたたずまいを活かしつつ、空き家になっていた建物をリノベーション、職住兼用の「なりわい住居」が連なるコミュニティを創造していく。
撮影時、2025年7月オープン予定に向けて見学会が実施されていた。
―― ある建築家の方に聞いたんですけど、家を建てるとき、いまはほとんど請負で仕事をするけれど、昔は普請と言って、人を集めて、地域でこういうお寺のお堂が必要だからってお金を集め、それで建てたりしていたんだと。
そのやり方だと仲間ありきで、必要性ありきで……。
福田さん そうですよね。
―― 江戸時代ぐらいはそれが一般的で、そうやって建築物が生み出されて、壊れたら維持するみたいな。
福田さん それで良かったんですよね。それでみんな幸せだったし、経済も成り立っていたんだけど、多分、資本主義が入ってきて……という話ですよね。
―― そうですね。そういう世界から離れちゃって、いま、また戻ってきているというか。
福田さん 全部を突き詰めていくと、いまの社会システムのひずみみたいな、資本主義にはいい面もあるけど、負の面が出てしまった結果だって、みんな思っている。
―― 体感はしてますよね。
福田さん ですよね。そこからこのシステムを否定する人もいるし、否定までいかないけど、少し距離をおいてつきあう、もしくは、つきあっている側のアプローチの仕方を工夫しようって考えている人はすごく増えてそうですよね。
きょん2 完全に否定しちゃうと世捨て人になっちゃう。
福田さん そうなんですよ。僕らが生きてる間にこのシステムがガラッとは変わるかはわからないし、文句だけ言っているというのは、あまり良くはないでしょう?
―― 福田さんと話していて、「ちょっと面倒なことをやる」というのがキーワードかなと感じました。
きょん2 対話にしたって、すごく面倒だよ(笑)。
福田さん 対話って、あっという間に時間が過ぎますね。
―― 対話的にお仕事されてるところもあるんじゃないかって、勝手に思いましたけど。
福田さん 使い分けてはいますよね。やっぱり場面において、ここは対話で皆さんと一緒にっていうところと、僕の場合、経営者という立場があるから、社員に対しても対話の場面とそうでない場面と、状況に応じて変えてはいます。
―― 対話的なものを感じられてるっていうだけでも違う。
福田さん そこはやっぱり、この葉山での実体験が生きているなと思います。それによって得られること、価値をものすごく感じているところはありますね。
―― 葉山そのものが、ちょっとした対話空間じゃないかって思っているんです。町制百周年ということで、そういうキーワードが出たところもあるんですけど。
福田さん 僕たちの百周年に対するアプローチというのは、たとえばDIYがあったり、ワークショップみたいなことがあったり、いろんな手法を取り入れた、参加型のプロジェクトみたいな言い方になるのなかと思っています。
平野邸もそうだし、最近では、旧東伏見宮の別邸を保存活用していきたいという話のなかで、皆さんに存在を知っていただき、そこに関わると楽しそうとか、それこそ対話のなかから活用の方法を見つけていたいと思いますよね。
もう一つは、こみちツアーですよ。高田明子さんたちが活動を続けてこられたけど、回数が減っていて。それって、関わる方が高齢化してきたからだと思うんですね。
僕たちの会社って、インターンなどで参加している子たちも結構いるので、まちの活動は若い世代の人たちに引き継いでいったほうがいいと思っていて。
彼らを少しずつ巻き込んで、明子さんたちがどういう思いでやってきたのか? 若い子たちから見て、それをどうアップデートしていきたいか? それぞれをすり合わせながら継続してやっていけたらって思っていますね。
―― こみちの活動は僕らも何かしら関わりたいと思っていて。歩くって、いろんな意味で大事ですよね。
福田さん いや、歩くのはいいですよ。めちゃくちゃ。
―― 歩きながら変容していく感じがあるじゃないですか。
福田さん だから、空き家とか古民家とか、物件や不動産を見に来てほしいってよく言われるんですけど、じつは建物のなかとかはあまり関心ないんですよ。
僕は設計士でもないから、そこはプロが見ればよいことで。僕にとっては、その(物件の)周辺のまちを歩くことのほうがずっと重要なんです。
―― 普通、みんな家しか見ないですよね。
福田さん あれは不思議ですよね。
―― 本当はまわりの環境もひっくるめて住まいだし、そこに人がいて、暮らしがあって。
福田さん そうだと思います。実際に暮らすなかで大事なのは、(物件以上に)そのまちに暮らしてる人とか、コミュニティとか、ライフスタイルですよね? 物件よりもまちを紹介することのほうが多かった理由も、そこですね。
きょん2 葉山に来ると癒されるって言う人はいっぱいいるけど、「癒しの次がある」っていうことがいいなと思うんです。なんかそこで終わる人が多いので。
―― 「癒し」や「共感」のさらに次があるって気がします。
福田さん なるほど。(エンジョイワークスでは)それが事業っていう言い方になるのかもしれないですね。別にお金になることじゃなくても、ここの土壌には、新しい価値が生まれることって絶対にあると思うんですよね。
―― あっという間の時間でしたが、楽しかったです。
福田さん 気がついたら一時間、経ってますね。こんな話で大丈夫なんですか?(笑)。
―― はい。だいたい皆さんそう言いますので(笑)。
きょん2 読み返すと面白いかもしれないです。
福田さん またなにかできるといいですね。近いですし、機会があればご一緒しましょう。
―― はい。またよろしくお願いします。
対話的なもの
対話的なもの、雑談と議論の中間あたりにあるもの
旧東伏見宮の別邸
東伏見宮依仁親王の別邸として1914(大正)3年に建設。関東大震災以前にさかのぼる町内唯一の皇族別荘。解体もやむなしという声が上がるなか、葉山環境デザイン集団、建築のプロ、地元住民の協働のもと、再生プロジェクトが進められている。
こみちツアー
「葉山環境文化デザイン集団」が企画・実施してきた、葉山に点在する昔ながらの路地や小道を、歩きながらめぐる体験型のまち歩きプロジェクト。
高田明子さんたち
葉山環境文化デザイン集団
https://www.hayama-design.org
癒しの次がある